持分のない一般社団法人の支配権を承継することはできるのか?

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一般社団法人の設立はとても簡単

一般社団法人の設立はとても簡単で、公益目的でなくとも設立できます。設立時の組織は、最低3名(社員2名と理事1名、兼務可)が必要ですが、資本金は必要ありません。

また、設立時の登録免許税は6万円(株式会社であれば15万円)で済みます。

オーナーがいない一般社団法人は支配権維持が難しい

一般社団法人は相続税がかからないことが大きなメリットになりますが、その理由は、出資者(オーナー)が存在しないからです。株式を発行しているわけでもなく、株式が発行されていない、誰のものでもない、宙に浮いたようなイメージの組織です。

株式会社であれば株式が相続財産となります。しかし、一般社団法人ならば株式を発行していないため、個人が保有している財産になりえないのです。

一般社団法人を設立して個人の資産管理を行った場合、親族内で支配を維持できるかどうかが問題となります。

社員(従業員という意味ではなく、株式会社での株主と同じように議決権を持ちます。)2名が社員総会を開催して理事(株式会社での取締役に相当します。)を選任します。それゆえ、オーナー不在の状況であるため、社員や理事を外部(知人・縁者・顧問税理士・反社会的勢力)に乗っ取られないように親族内で支配し続ける能力が必要なのです。

株式会社で資産管理を行って、株式を子供に引き継ぐ場合、会社支配権をどの子に持たせるかを決定して、株式を承継させます。

これに対して、一般社団法人の場合、法人の支配権をどの子に持たせるかを決定して、社員の地位を交代させます。この点、「家族で仲良く」と考えてしまうと、持分がなく社員や理事の変更等は自由であるため、子供全員を社員にすることができます。これは後継者決定問題の先送りとなりますが、使い勝手がいいのです。

一般社団法人に拠出した個人財産は取り返すことができるか?

一般社団法人の設立を検討しますと、必ず出てくる質問が、「法人から財産を取り戻すことはできるのか?」というものです。オーナー不在の法人に移転しまうわけですから、個人の所有権を失ってしまうことになり、不安に思うことでしょう。

この点、定款で残余財産の分配の関する規定を設けることはできないものの、社員総会の決議で一般社団法人を清算すること可能です。清算するのであれば、残余財産分配(個人への財産の返還)を行うことができ、法人へ移しておいた財産を取り戻すことが出来るのです。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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