事業承継支援研究会

第2回 事例研究問題

2017年11月07日  

第2回事業承継支援研究会にて用いられた問題を掲載いたします。
下記の画像をリンクしていただくことでPDFが開きますので、ご利用ください。

11月6日 第2回事業承継支援研究会 事例研究問題

事例研究3 (銀行からの資金調達)

甲氏(65歳)は、40年前に設立したA社(警備業、従業員数150人、売上高7億円、当期純利益2千万円、純資産5億円)の創業者であり、株式10,000株(発行済議決権株式の100%)を所有し、これまで代表取締役社長として頑張ってきました。役員報酬は月額100万円です。
引退を考えるようになった甲氏は、一人息子である長男である乙氏(専務取締役、30歳)への事業承継を考えるようになりました。甲氏の長女丙はすでに嫁に出て、現在専業主婦をしており、会社経営に関与する意向は全くありません。

ある日、メインバンクである信用金庫が、事業承継支援を専門とする中小企業診断士であるあなたを連れて面談を行いました。信用金庫とA社との関係は良好です。あなたが事前にA社の株式の評価を行ったところ、1株@20,000円(類似業種比準価額)でした。
あなたは甲社長と乙専務との打ち合わせにおいて、株式承継に関する提案を行いました。
(本事例では、経営承継円滑化法の民法特例の適用まで検討しないものとします。)
【問1】 A社長の退職金を支給する場合、税務上の退職金(法人税法上の損金=所得税法上の退職所得)と認められる金額はいくらでしょうか?
【問2】 A社長の個人財産と、会社の貸借対照表が以下の状況であった場合、あなたはどのような方法を提案しますか?


<甲社長の個人財産>
自宅は(高級賃貸マンション)、金融資産10百万円、A社株式

【問3】 甲社長の個人財産と、会社の貸借対照表が以下の状況であった場合、あなたはどのような方法を提案しますか?

<甲社長の個人財産>
自宅50百万円(時価)、金融資産3億円、A社株式

ヒント
「支配権」  株式承継(法人)又は不動産承継(個人)、分割と税負担
「借入金」  個人保証の引継ぎ、解除
「リーダー」 社長と従業員との信頼関係、経営理念、リーダーシップ
「管理」   従業員・組織の管理、規則、コンプライアンス
「戦略」   企業の収益性と成長性の維持、新規事業
「知的資産」 顧客関係、営業力、技術・ノウハウ、許認可

事例研究4 (従業員と第三者の選択)

甲社長(65歳)は、40年前に設立したB社(印刷業、従業員数10人、売上高5億円、当期純利益1千万円、純資産1億円)の創業者で、これまで代表取締役社長として頑張ってきました。
株主構成は以下の通りです。

顧問税理士による株式の相続税評価@10,000円×10,000株=1億円

甲氏には子供がいませんので、有望な若手である乙氏(常務取締役営業部長、40歳)が後継者として最適ではないかと考えました。しかし、乙氏は、生え抜きサラリーマンであり、顧問税理士が評価した1億円という評価の株式100%を買い取る資金がありません。甲氏は「私と妻の持株を合わせると30%になる。これであれば3,000万円で乙氏が買い取ることができるだろう。」と考えています。その一方で、会社の借入金5,000万円について個人保証しており、この保証債務の承継についても気になるところです。

ある日、業界最大手のX社(上場)からも「グループ傘下に入らないか。」との誘いがありました。専務取締役の丙氏によれば、「X社が導入した最新の印刷機械を使えば、当社の収益性は大幅にアップだろう。」とのことです。しかし、監査役の丁氏は、「X社の傘下に入れば、当社の工場は操業停止となり、従業員が解雇されてしまうおそれがある。」と反対しています。

ある日、メインバンクである信用金庫が、事業承継支援を専門とする中小企業診断士であるあなたを連れて面談を行いました。
あなたは甲社長との打ち合わせにおいて、今後の事業承継に関する提案を行います。

【問1】次期社長を乙氏(常務取締役営業部長)とする場合、事業承継の進め方を述べなさい。

【問2】従業員が経営者としての資質に欠き、後継者とすべきではないと判断された場合、どのすればよいでしょうか?

【問3】X社に会社売却する場合の事業承継の進め方を述べなさい。

ヒント
「支配権」  株式承継(法人)又は不動産承継(個人)、分割と税負担
「借入金」  個人保証の引継ぎ、解除
「リーダー」 社長と従業員との信頼関係、経営理念、リーダーシップ
「管理」   従業員・組織の管理、規則、コンプライアンス
「戦略」   企業の収益性と成長性の維持、新規事業
「知的資産」 顧客関係、営業力、技術・ノウハウ、許認可