事業承継ONLINE

情報開示

2017年11月07日  

お客様に開示をお願いした資料リスト

当社をM&Aアドバイザーとして選任していただいた場合、以下のような資料をご用意いただいきます。これらは、秘密保持契約を前提として、買い手候補に対して開示する情報となります。

これらの資料をご用意いただく際、お客様が日頃扱わないような細かい資料を社内で集めなければなりません。この点、実務の現場にほとんど顔を出さないお客様であれば、突然の資料集めの動きを従業員から不審に思われてしまうかもしれません。資料集めは、週末に行うなど、慎重に行動なさってください。

以下の資料を基礎として、買い手候補に対して開示されるインフォメーション・メモランダムが作成されることとなります。

お客様にお願いしている開示資料リスト

概要

会社案内
定款
商業登記簿謄本
株主名簿

財務
過去3期分の法人税申告書、決算書、勘定明細
直近の月次試算表
直近の決算時の固定資産明細書・リース資産明細書
固定資産の時価情報
直近の決算時の現預金・借入金・有価証券の明細書
退職金規程、保証債務明細、退職給付債務の時価情報
保険金の時価情報

ビジネス
製品・商品カタログ
商流図
製品別・商品別(店舗別、販路別)売上高および粗利率
仕入先明細書
主要な知的財産権の一覧表、重要な許認可のリスト

事業計画
業界動向、経営方針、事業戦略の説明資料
事業計画(将来5期分の予想売上高、営業利益、設備投資)

組織・人事
本社・支店・工場・店舗など営業拠点の説明資料
組織図(各部署毎の人数)
工場の製造工程のチャート図
役員全員の経歴書

財務情報については、決算書や申告書だけではなく、貸借対照表の非事業性資産を評価するための時価情報が必要となります。たとえば、不動産や有価証券の時価、保険積立金の時価、簿外となっている退職給付債務の時価などです。

また、買い手候補によるM&A株価の算定を可能とするため、将来3年~5年分の損益予測および投資計画が必要です。しかし、中小企業で事業計画をきちんと作っているお客様は少なく、多くの場合、当社から依頼してから作り始めていらっしゃいます。

特に、投資計画については、将来の収益性に大きく影響する重要な情報となりますので、詳細な項目まで予測しておきましょう。また、前向きな設備投資だけでなく、従業員の割増退職金や設備の撤去費用などのリストラ費用まで事業計画に織り込んでおくほうがよいでしょう。

買い手候補への情報開示の進め方

情報開示の3つの方法

秘密保持契約の締結を前提とし、当社は、買い手候補に対して、以下の方法によって情報開示を行います。いずれの方法によっても、M&Aアドバイザーは、買い手候補と直接面会して資料を手渡し、口頭での補足説明を行うことになります。

買い手候補と直接会う必要があるのは、その場で質疑応答を行うことによって、検討に必要な情報を提供すること、そして、買い手候補の初期的な反応を見ることによって買収意欲の強さを評価することが目的です。また、M&Aアドバイザーと買い手候補との間の人間関係の基礎を形成し、その後の交渉プロセスにおける円滑なコミュニケーションに役立てるという目的もあります。

情報開示の方法

インフォメーション・メモランダムの提出
マネジメント・プレゼンテーションの実施
質疑応答

(1)インフォメーション・メモランダムの提出

開示方法の一つは、インフォメーション・メモランダム、すなわち、買い手候補が買収価格を算定するために必要な情報を一式まとめたパッケージを開示することです。買収価格の算定は、買い手候補にとって極めて重要なプロセスですから、インフォメーション・メモランダムにおいて必要十分な情報が提供され、買収の意思決定を後押しするような情報でなければなりません。

ただし、この段階ではまだ買い手候補と交渉を始めると決まったわけではありませんので、対象会社の情報を洗いざらいさらけ出す必要はありません。たとえば、製造原価明細や工程レイアウト図などの極めて重要な企業秘密、工場の土壌汚染などの深刻なマイナス情報については、大まかな概要だけの説明にとどめ、詳細は後から実施されるデュー・ディリジェンスにおいて開示するような段階的な方法とすべきでしょう。

開示資料のフォーマットに決まったものはありませんが、投資銀行が作るように、MS-PowerPointを使ってビジュアル的にも美しい体裁を整え、きちんと製本することができれば理想的です。そこまで丁寧に作成する余裕がない場合には、会社が用意した資料をコピーして、そのままバインダーに綴り込むようなものでも構いません。

ただし、「事業計画」の説明資料だけは、見せ方に工夫しなければなりません。事業計画は、経営者へのヒアリングに基づき、数値データやグラフ、説明文によってとして開示されることになりますが、単に数字だけを開示するのではなく、その根拠となる事業戦略を経営分析のフレームワーク(SWOT分析など)に基づいて整理し、効果的なプレゼンテーション資料としてまとめておくべきでしょう。

インフォメーション・メモランダムの構成

(1) 会社概要(設立年月日、沿革、株主構成などの基本情報、会社パンフレットなど)

(2) 事業の概要

業界動向の分析(競合他社の説明、市場占有率)
製品カタログ、製品の強みを説明
商流図、事業系統図、子会社との資本関係
主要な固定資産(土地、建物、機械設備など)のリスト
事業別・地域別・製品別売上高明細書
得意先リスト(売上高上位10社)
仕入先リスト(仕入額上位5社)
許認可、知的財産権のリスト

(3)事業の概要

組織図(各部署ごとの人数)
経営陣の紹介(担当職務、略歴)
従業員(名前は個人情報なので隠すが、職種と年齢、保有する技能や資格を記載)
社内規程(就業規則、退職金規程など)

(4)財務情報

過去3年間の財務諸表(P/L、B/S、C/F)
直近の事業年度の税務申告書
土地の時価情報
生命保険の解約返戻金の情報
退職給付債務
銀行借入金、保証債務の明細書(銀行名、残高、返済期限、月額返済額、利率など)

(5)事業計画

将来3年~5年の損益予測、運転資本予測、投資計画(減価償却費)
具体的な事業戦略の説明(経営環境に対する見方、投資計画の詳細、営業計画、組織・人事計画、製造、情報システム、財務)

(2)マネジメント・プレゼンテーションの実施

資料の提供と同時に、トップ・ミーティングを設定し、お客様及び自社の経営陣によるプレゼンテーションを実施しましょう。財務情報など定量的な情報は、書面で開示すれば十分ですが、事業内容や事業戦略などの定性的な情報は、口頭による補足説明が不可欠だからです。

ミーティングの場所は、当社の事務所やホテルの貸会議室などを用意し、秘密を保持できる場所を確保します。
この場には、買い手候補のトップに近い経営者に出席してもらい、お客様及び自社の経営陣(たとえば、営業担当役員、管理担当役員)によるプレゼンテーションを実施します。

このミーティングが、出席者同士の初顔合わせの場となるケースもよくありますが、買い手候補にとっては、経営陣の資質と能力を評価する場として位置付けられるため、経営陣の経営に対する考えを積極的にアピールしたほうがよいでしょう。

最も重要なことは、このマネジメント・プレゼンテーションが、自社という「商品」をセールスする場となりますから、いかに買い手候補に「買いたい」と思わせるかが勝負になるということです。自社の経営陣には、プレゼンテーションの入念な準備をお願いすると同時に、当社としても見栄えの良い資料作成などで最大限のサポートを提供します。

さらに、プレゼンテーションだけでなく、製造業の場合であれば工場の見学会を設けるなど、買い手候補に自社の事業拠点を見学させ、事業内容の理解を促すことも必要です。工場見学では、経営陣だけではなく、工場長など製造部門の責任者によるプレゼンテーションも同時に行います。

一般的に、製造業の会社の経営者は、同業者であれば、工場を一度見ただけでその生産性や技術力、最大生産能力や機械設備の稼働状況などを評価できるといわれ、工場見学はM&A株価の算定のために不可欠なプロセスとなります。

自社の経営陣によるマネジメント・プレゼンテーションは非常に重要な意味を持っています。ここで買収するかどうか、買い手候補がM&Aの基本的な意向を固めるケースが少なくありません。

(3)買い手候補との質疑応答

最後の対応が、買い手候補からの質問に対してお客様及び自社の担当者が回答すること、又は追加情報の開示を行うことです。
買い手候補から出てくる質問の代表例は、以下のようなものですから、当社は、これらの質問が出てきたときに即座に答えられるよう、事前に回答を準備しておくようにしております。

退職給付債務に対する引当金は全額が計上されているか。
棚卸資産が増加しているが、不良在庫、陳腐化在庫があるのではないか。
売掛金が多いが、回収可能性に問題はないのか。不良債権はないか。
工場に土壌汚染などの環境問題は発生していないか。
大口得意先との関係は良好か、今後も継続して取引できる見込みか。
機械設備の入れ替えなど更新投資は適切に行ってきたか。将来に大規模修繕が発生する可能性はないか。
オーナーや関係会社からの間接業務の提供や従業員の受入れがないか。(スタンド・アローン・コストに関する情報を求められます。資本関係が複雑なグループ企業が対象になるケース、事業の一部を切り出して売却するケースには問題となります。)
大口得意先やライセンス供与元との契約書に「チェンジ・オブ・コントロール条項」(オーナーの異動があった場合、契約を継続するためには相手方の事前同意を必要とする条項)は入っていないか。
労働組合を解散させることはできないか。
従業員の中で重要なキーパーソンは誰か。

買い手からの意向表明書の提出

お客様からの情報開示を行ったならば、その次は買い手候補の手番です。2~3週間程度の検討期間を与え、締切日を明確に指示したうえで、すべての買い手候補から、法的拘束力のない、差入れ型の「意向表明書(Letter of Intent、LOI「エル・オー・アイ」)」を代表者のサイン(押印)入りで提出してもらいます。

これには法的拘束力はないものの、買い手候補が考えている基本的な取引条件を書面に記載させることによって、最終契約書の条件交渉のときまで心理的な縛りを与える効果があります。

意向表明書の主要な記載項目は、以下の4つです。

意向表明書の記載項目

譲渡価格
買収スキーム
取引実行後の運営方針
今後の進め方
しかし、案件によってはこれら4項目で十分とは言えず、さまざまな付帯条件が記載されることでしょう。たとえば、「対象事業の一部だけを買収としたい」、「●●を維持することを条件に買収したい」、「工場を閉鎖し、従業員を全員解雇するのであれば、価格に10億円上乗せすることが可能」など、買い手候補から提案される取引スキームです。買収を真剣に検討している買い手候補ほど、意向表明書の記載項目の数は多くなるでしょう。

意向表明書のサンプル

info-disc-01
売り手は、意向表明書で提示される条件によって買い手候補を絞り込み、取引の実現可能性が高いと評価される買い手候補にのみデュー・ディリジェンス実施の機会を提供します。

当社は原則として入札方式を採用するため、意向表明書が複数の買い手候補から提出されることになります。お客様は、意向表明書で提示される条件に基づく基本合意書を締結するかどうか、また、次の段階であるデュー・ディリジェンスを(1)複数の買い手候補に実施させるのか(現実的には2社が精一杯)、(2)1社だけにデュー・ディリジェンスを実施させるのか(相対取引への移行)を決定します。