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仲介取引の問題

2017年11月07日  

M&A仲介の問題点

M&A仲介業はマッチング機能に限定したビジネス

一般的に誤解されていることが多い用語ではありますが、「仲介」と「M&Aアドバイザリー」は、その目的・内容・性質が大きく異なります。

M&A実務における「仲介」とは、取引相手方を見つけて紹介し、ニーズのマッチングを図ることをいいます。

M&Aアドバイザーの機能として、マッチング機能とコーディネート機能がありますが、「仲介」とはまさにマッチング機能のことを意味しています。つまり、M&A仲介会社はマッチング機能に限定してサービスを提供している会社なのです。

M&A仲介会社のマッチング機能の価値は、結婚情報サービスをイメージするとわかりやすいでしょう。昨今、「婚活」がブームになっています。結婚したくても相手が見つからないという独身の人達が、結婚情報サービスを利用するケースが増えているようです。「職場に出会いが全くない」、「仕事が忙しくて相手を探す時間がない。」といった人達にとって、結婚情報サービスは、相手を探し出すという重要な機能を提供するものなのです。

しかし、結婚情報サービスは、お相手を紹介することに限定したサービスなので、デートの現場に同席したり、結婚のプロポーズの台詞までアドバイスしたりすることはありません。つまり、結婚情報サービスの価値は、そこに登録する多数の会員情報を活用した「マッチング機能」にあるのです。

このような結婚情報サービスと同じく、M&Aの世界においてマッチング機能を提供しているのが、M&A仲介会社です。M&A仲介会社は、条件交渉など顧客の利害に係る交渉には関与せず、マッチング機能に限定したサービスを提供します。具体的には、M&Aニーズのある顧客同士を紹介し、ニーズが合致した場合には、両者のミーティングの日時・場所の設定等を行い、取引の成立をサポートするのです。

M&A仲介会社のサービスがマッチング機能に限定されるのは、「双方代理」の問題があるからです。双方代理とは、利害の対立する当事者双方に対して代理人としてのサービスを提供し、その対価として報酬を受け取ることをいいます。M&A仲介会社は双方代理を行うため、顧客の利害に係る交渉に関与することができないのです。

たとえば、M&Aにおける価格交渉を考えてみましょう。基本的に、買い手は「最も安い価格」で買収したいと考えますが、売り手は「最も高い価格」で売却したいと考えます。M&A取引において当事者の利害は対立しており、双方の利益を同時に実現するアドバイスの提供は、理論的に不可能です。

そこで、M&A仲介会社は、双方代理の問題を回避するため、提供するサービスの範囲をマッチング機能に限定しているのです。

仲介とM&Aアドバイザリーの比較

仲介業務の問題点

M&Aでアドバイスの対象となるのは、すべて交渉事です。そして、交渉のプロセスにおいて、M&Aアドバイザーはお客様に対して検討すべき事実はすべて開示しなくてはなりません。

しかし、M&Aアドバイザーが仲介の状態にあるとすれば、たとえば売り手の交渉戦術の手の内が、買い手に筒抜けになってしまいます。たとえば、売り手が「ここまでならば妥協できる下限価格」を決めていたとしても、それがM&A仲介会社を通じて買い手に流れてしまい、高値で売却できる機会が失われてしまいます。あるいは、他の買い手候補との交渉に切り換えようとしても、その情報がすぐに買い手の耳に入ってしまうため、価格交渉の駆け引きができなくなってしまいます。もし、交渉相手が今の買い手候補以外に見つからないという不利な状況にあったとしても、それを相手に知られてしまうことになるでしょう。売り手にとって不利な情報までもすべて買い手に筒抜けになり、価格交渉において買い叩かれることになってしまいます。

つまり、『売り手に不利な事柄をすべて知り得る売り手のM&Aアドバイザーが、同時に買い手のM&Aアドバイザーでもあれば、売り手にとって致命的な失敗をもたらす可能性があることは明確』(服部暢達、1999年)とされるように、仲介業務は、一般的に顧客から警戒されるものなのです。

M&A仲介では自社を買い叩かれる

M&A仲介は、両手取引であり、M&A仲介会社は、買い手を見つければ報酬が2倍になります(「両手仲介」、つまり、売り手と買い手の両方から報酬を受け取ります。)。それゆえ、ほぼ全てのM&A仲介会社は「M&Aアドバイザリー業務ではなく、仲介(両手取引)をしたい。」と思っています。それが自然な発想なのです。

そうしますと、M&A仲介会社は、自社の顧客である買い手候補とのM&Aを何とか成約させようと努力します。なぜなら、他のM&A仲介会社の顧客である買い手候補とのM&Aが成約してしまえば、買い手側から報酬をもらえないからです。

それゆえ、両手仲介を狙うM&A仲介会社は、「最も高い買い手」を探す努力をしません。そんなことをしていては、自分が報酬を2倍もらうことが出来なくなってしまいます。それよりも、自社の顧客である買い手候補が希望する買収価額で、なんとか売り手を納得させようとします。

欧米では両手仲介が禁止されている国もあります。どうして日本では認められているのでしょうか。その理由の一つは、戦後間もなく成立した法律(宅地建物取引業法)で、両手仲介が認められており、それをそのまま制度変更していないということです。既得権益として、不動産業界は続けています。また、不動産業界が、両手仲介の禁止に猛反対しているということです。両手仲介は儲かるからです。ちなみに、2009年夏の政権を取得した民主党は、両手仲介を法律で禁止しようと考えていました(民主党政策集「INDEX2009」:不動産仲介業者の双方代理の原則禁止(両手仲介(両手取引)の禁止)」を提言。)しかし、不動産業界の猛反対により断念しました。