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株価算定【DCF法】

2017年11月07日  

DCF法の計算方法

DCF法(Discounted Cash Flow法)の価値評価を行うためには、事業計画と割引率が必要となります。事業計画は、単なる努力目標ではなく、会社の事業戦略に基づいた現実的な中期事業計画として作成した予測数値を使います。問題となるのは、割引率です。

実務では、CAPM(Capital Asset Pricing Model)というファイナンス理論を使って割引率を算出します。そのためには、(1)安全資産のリスク・フリー・レート、(2)証券市場のマーケット・リスク・プレミアム、(3)類似上場企業のベータ値を入手して株主資本コストを計算するとともに、(4)負債コストと(5)負債・株主資本比率を使って、加重平均資本コストを計算しなければなりません。加重平均資本コストが、割引率となります。

CAPM理論における株主資本コストの計算方法


DCF法の事業計画

DCF法は、売却対象となる事業の将来キャッシュ・フローを測定して事業価値を評価する方法であり、会社売却では最もよく用いられる手法です。この場合の将来キャッシュ・フローについては、対象会社の事業計画書から算定されることになるため、事業計画書をいかに買い手候補に理解してもらうかが勝負となります。

将来キャッシュ・フローとは、買い手にとっての投資回収額です。ここで問題となるのが将来キャッシュ・フローの予測期間です。買い手の投資回収計算を考えるのであれば、その将来キャッシュ・フローを可能な限り現実的に予測しなければ、投資の採算性を評価することできません。ただし、将来キャッシュ・フローを正しく予測することは現実的に不可能であるので、結果的には、合理的に範囲で前提条件を置いて将来キャッシュ・フローを見積もることになるのです。

永久に将来キャッシュ・フロー予想を行うことは不可能であるため、定常状態(ライフサイクル上、成長が止まる状態)に達するまで(一般的には5~10年程度)を予測し、その割引現在価値の合計に、予測終了時点での残存価値の割引現在価値を加算して事業価値を算出します。

予測期間終了時には、その後も継続して事業活動を行う場合の事業価値である残存価値(Terminal value)を求めます。その方法として永久還元法があります。永久還元法で評価する場合、通常は予測期間以降のキャッシュ・フローが一定成長すると仮定し、以下の算式により残存価値を求めることになります。

残存価値は、継続して創出可能な将来キャッシュ・フローを見積もった予測最終年度のキャッシュ・フローが継続すると仮定して計算します。

永久成長率は、マクロ経済状況や所属する業界自体の成長率、対象事業のビジネスを考慮し、ゼロと設定することが一般的です。現在のようなデフレ時代にあっては、よほどのことがない限り、プラスの成長率を見込むのは困難だからなのです。

会社のキャッシュ・フローのイメージ

事業計画において、将来キャッシュ・フローは、簡便的に以下の数式によって計算します。

ここでは税引き後の「当期純利益」ではなく「営業利益」を使って計算します。これは、支払利息の節税効果を排除するとともに、負債ゼロの場合の税額を控除することによって、資本構造に左右されないキャッシュ・フローを算出したいからです。

対象事業から得られるキャッシュ・フローであるため、税引後営業利益に対して現金収支を伴わない費用である減価償却費を加算することにより、利益ベースの収益力からキャッシュ・フロー・ベースの収益力へと変換します。なお、この減価償却費は有形固定資産のみに限らず、のれん等の無形固定資産や繰延資産の償却費等も含む点に注意が必要でしょう。

また、対象事業を運営するにあたり運転資金の増減が予定されている場合は、その必要運転資金の見込額を将来キャッシュ・フローに反映させる必要があります。事業価値の評価を行う際には、この運転資金増減額がキャッシュ・フローに与える影響を忘れてはなりません。売上高と運転資本額は比例するため、たとえば、売上高が増加することによって必要運転資金が増加し、キャッシュ・フローが減少します。そこで、必要運転資金の増減に関するキャッシュ・フローヘの影響を将来キャッシュ・フローに反映させる必要があります。

さらに、設備投資が必要な場合は、その設備投資の見込額を将来キャッシュ・フローに反映させなければなりません。例えば、製造業やホテル業における工場・施設等の有形固定資産に対するメンテナンス費用や事業運営に必要なソフトウェアの更新費用等は営業利益を増加させるために不可欠の現金支出であるため、必要となる設備投資額を見積ることになります。

DCF法の割引率

DCF法を使って株式価値を行う場合、割引率には、株主資本コストと税引後負債コストを、負債資本比率で加重平均した加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital=WACC)を使用することが一般的です。

株主資本コストは、投資家による株式投資の期待利回りを意味しています。これを計算する理論が、資本資産評価モデル(Capital Asset Pricing Model=CAPM)である。ここでの株主資本コストの算式は、以下の通りです。

しかし、CAPMを使うと言っても、ここでの株主資本コストの算式は、ベータ値を推測するための類似上場企業の選び方、同業他社を参考とした負債資本比率の決め方など、恣意的な要素が多く、客観的な数値とはなりえません。