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親族内承継・従業員承継

2017年11月07日  

事業承継=「株式承継」+「経営承継」

事業承継は、企業経営という無形資産の承継の側面と、自社株式という財産の承継の側面の両面から考える必要があります。

企業経営者が所有する財産は「自社株式(非上場株式)」です。すなわち、自社株式という財産を後継者へ移すことが、事業承継です。この点、業績好調で利益の内部留保が厚い会社、多額の含み益の土地を保有する会社は、自社株式の相続税評価が高くなります。そのため、後継者の地位や財産を巡る親族間争いが発生することに加えて、高額の納税資金の準備が問題となります。それゆえ、自社株式の評価引下げがポイントとなります。

一方、自社株式によって裏付けられる権利は、会社を支配して経営を行う権利です。つまり、自社株式が承継される結果として、会社の経営そのものが承継されることになります。これが企業経営の承継という問題です。

私たち事業承継コンサルティング株式会社では、「株式承継」について公認会計士が支援を行うと同時に、「経営承継」について中小企業診断士が支援を行っています。つまり、「事業承継」を両面からサポートする体制を採っています。

「経営承継」とは、事業価値すなわち商売の仕組み(儲ける仕組み)を、いかにして次世代に継続させるかという問題です。一般的に、中小企業では企業経営者個人の人的能力(経営力)が依存することが多く、その経営力を後継者に引き継ぐことができるかどうかが問題となります。例えば、カリスマ創業者のリーダーシップによって維持されてきた経営体制を組織的経営へ移行することや、後継者を一人前の社長になるまで育成することなど、経営管理体制の整備が中心課題となるのです。

そう考えれば、後継者がいない場合には、その企業のビジネスを理解した親族外の後継者に承継させるMBO(Management Buy Out)やM&Aも視野に入れるべきです。そうすることで、資産承継という大きなイベントを乗り越えて、顧客、従業員、取引先等の利害関係者の利益を維持することができるでしょう。

後継者の選び方(親族か従業員か)

企業経営者の誰もが最初に考えることは、親族内の子供に会社を承継させることです。これは、経営者個人が心情的に望んでいる方向であり、会社の事業用資産と個人財産が実質的に一体化している中小企業にとっては、個人財産の引継ぎという最も自然な相続対策です。
この場合、後継者教育、自社株式の贈与税が問題となります。しかし、近年、企業経営者の子供が、会社の後継者になることを望まない場合が多く見られるため、後継者不在が大きな問題となります。
そこで、ここ数年増えてきている方向が、親族外の従業員への承継です。親族外の人へ個人財産を渡すことになるため、無償での贈与というわけにはいかず、有償での売却(MBO)になることが一般的です。つまり、後継者となった従業員が、現経営者から株式を購入するというものです。
事業承継を社会的な観点から見れば、事業継続による雇用の維持を実現することができるため、経営者としての意欲や能力の乏しい子供が承継する場合よりも、意欲と能力ある人材を従業員の中から選ぶほうが好ましく、自社で働いた経験が乏しい子供よりも、長年勤務してきた従業員のほうが、事業内容を深く理解している点において有利だといえます。
しかし、従業員承継を行う場合、後継者が親族ではない点に対する配慮が必要となります。また、従業員への事業承継は、実質的に、従業員による「企業買収」ということになるため、自社株式を買取るための資金調達、現経営者個人が所有する事業用資産や、個人保証・担保の引継ぎが難しい問題となります。
第四の方向性は、第三者への売却(M&A)です。経営の後継者候補がいない場合には、外部の第三者に企業経営を譲るしかありません。その際に、経営権を譲るだけでなく、株式も親族外の第三者に売却してしまうことになります。
もちろん、全ての企業がしっかりとした事業価値源泉を有しているわけではないため、事業を承継したいという第三者が必ず見つかるわけではありません。
また、その企業の利益を生み出す事業価値源泉が、創業した企業オーナー(=経営者)の経営力(営業力、技術力、リーダーシップなど)や経営ノウハウに依存する場合、それを親族外の第三者に移転することは容易ではありません。そのような場合は、第三者への事業承継が困難となります。
従業員が継がないとすれば、最後は、第三者への売却(M&A)という選択肢になります。もちろん、買い手を見つけることは容易ではありません。また、買い手が見つかったとしても、これまでの経営に関与していない第三者が経営を引継ぐことになるため、円滑な経営承継もまた容易なことではありません。同様の事業内容を知っている同業者でなければ、M&Aによって経営承継することは困難でしょう。それゆえ、一定期間、現経営者が会社に残って経営を後方支援するなどして顧客資産を移転させることができるよう、特別な取り組みが求められます。

事業承継の難易度