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事業承継のための自社株対策(2)「類似業種比準価額を引下げる」

2017年11月07日  

事業承継のために自社株評価を引下げる方法を検討してみましょう。

類似業種比準価額の3つの比準要素の配分比率は、配当1:利益3:純資産1となっていますから、この中で株価への影響が最も大きな要素は「利益金額」です。それゆえ、類似業種比準価額を引き下げるためには、利益(課税所得金額)を引き下げることが効果的です。

弊社のアドバイス実績では、前年度 3億円の利益を生前贈与を実行する事業年度 1億2千万円(前年比60%減)に減少させることによって、株価を@50,000円から@10,000円まで約8割下げたケースがあります。

株価を下げたタイミングで相続時精算課税を適用すれば、贈与税を大幅に軽減(ゼロも可能)した状態で後継者へ株式を引継ぐことが可能となります。

含み損の実現

例えば、遊休不動産などで含み損を抱えている場合は、売却して損失を顕在化させることによって利益金額を圧縮しましょう。3要素のうち利益金額には、不動産売却益等の臨時的な特別利益を加算する必要はありませんが、臨時的な損失は当然に差し引くことができます。もっとも、「グループ法人税制」の適用があるため、関連会社に飛ばして損失を吐き出すような手法は使うことができません。すなわち、グループ法人間で帳簿価額1千万円以上の資産等を譲渡する場合、譲渡損益を計上することはできません。

退職金の支給

オーナー経営者の退職時と併せて、後継者に株式を生前贈与するのであれば、役員退職金の支払いは利益の圧縮に効果的です。一般的に、法人税法では次のように計算式による金額を役員退職金として認めています。

役員退職金 = 最終報酬月額 × 勤務年数 × 功績倍率

すべての役職を退く場合はもちろん、常勤から非常勤などになる場合でも役員退職金の支給対象になります(この場合でも実態をともなっていることが必要です。たとえば退職後も引続き会社に出社して経営指揮をとって意思決定をしていたら、退職の事実はみとめられないでしょう。)。

役員退職金の支給があると、多額の損金が計上されますから利益を圧縮するとともに、多額の現金支出によって純資産も圧縮しますから、自社株の評価額は下がります。

生命保険の活用

生命保険を活用して利益を圧縮する手段もあります。会社が保険契約者及び受取人となり、役員が非保険者となる生命保険を使い、支払保険料を損金に算入します。また、相続時には、会社が受け取る保険金を死亡退職金に充当することによって、相続人の納税資金を確保することができます。その際、終身保険や長期平準定期保険、逓増定期保険、養老保険が使われます。

高収益部門の分離

複数の事業を営む会社であれば、高収益部門を会社分割により別会社として独立させる手法が効果的です。これによって、既存会社には低収益部門が残るために利益を減少させることができます。

また、高収益部門が使用する固定資産(不動産)を賃貸すれば、純資産価額を下げることができます。すなわち、純資産価額の評価において、建物を貸家評価(概ね30%減少)、土地を貸家建付地評価(概ね20%減少)とすることができます。

さらに、分社型新設分割によって高収益部門を既存会社の子会社とすれば、将来的に株価が上昇しても、その上昇分に対する法人税等相当額42%を控除することが可能となり、既存会社の株価上昇を抑えることができます。