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【企業経営者の相続対策】株式承継の方法と後継者に伴う事業リスク〜子供に株式を継がせるにはどうすればよいのか?〜(公認会計/士税理士 岸田康雄)

2019年03月25日  

1 株価は毎年上がり続ける

親族内への株式承継の方法は、大きく分けて「贈与(無償の譲渡)」「有償の譲渡」および「相続」の3つ方法になります。

贈与をさらに細分化すれば、暦年贈与、相続時精算課税制度による贈与、経営承継円滑化法に基づく納税猶予制度による贈与の3つに分けられることになります。どのような方法によった場合でも、株式承継時に何らかの税金が発生することは避けられません。

このほかにも公益法人に寄附する方法や、従業員持株会を活用する方法がありますが、これらは富裕層や大企業のための特殊な方法でしょう。これらの方法の中で、贈与と有償譲渡は、企業オーナー(現経営者)の生前に、自社株式を後継者へ承継する方法です。生前に承継しない場合は、結果として相続まで株式を持ち続けることになります。

選択すべき承継の方法は、その経営者や後継者の置かれる状況によって異なります。特に、推定相続人の遺産分割の方向性や、親族の状況によって異なってくることでしょう。

いずれにせよ、問題となるのは、優良な事業であればあるほど、自社株式の評価が高くなることです。すなわち、業績好調の会社の株式の企業オーナーが保有していると、その個人財産の大きさは、毎年どんどん大きくなり、相続税はどんどん膨らんでいくことになります。

事業の業績が利益を計上し続けており、現在の企業オーナーが何もしなければ、後継者が将来支払うと想定される相続税が年々増えていきます。高い利益水準に対して多額の法人税を支払ったうえに、将来の相続税負担も大きくなるという厳しい状況です。そこで、後継者へ株式を承継するタイミングを早くすることが課題となります。

2 親族内承継も失敗するリスクがある

親族内の承継にもリスクが伴います。大きなものとして、以下の2つのリスクが挙げられます。

一つは、事業が存続できなくなるリスクが伴います。たとえば、現経常者の能力に依存していたため、経営者の引退によって一気に経営の機能が低下してしまい、それによって業績が悪化することがあります。

例えば、現経常者の子供を後継者にしたとき、その事業承継に古参役員や従業員からの信任を得られず、従来の経営管理体制が分裂することがあります。また、事業に必要な優秀な人材の忠誠心が失われ、退職してしまうこともあります。さらに、子供が経営者として未熟であったため、取引先や得意先との関係を維持することができず、取引が停止になることもあります。

第二に、親族内で支配権争いが起こってしまうリスク、いわゆる争族リスクが伴います。子供が複数いる家族で、後継者を明確に決めなかったことによって、とりあえず、複数の後継者を想定することがありますが、兄弟に株式を分散させててしまった場合、先代経営者がいなくなった後に、経営権をめぐる争いが生じることがあります。また、相続財産のほとんどが自社株式であったために、後継者ではない相続人にまで株式を相続してしまった場合、後継者ではない相続人からから株式の買い取り請求がおきる可能性があります。経営に関与していないのだから、現金化してくれという要望です。これに応じれば、自己株式取得の場合、会社から多額の現金が流出することになり、事業の資金繰りを悪化させます。

このような親族間の争いが生じれば、従業員が動揺し、士気が低下したり退職者が出たりする事態を招くため注意が必要です。

執筆者紹介

岸田 康雄 (きしだ やすお)

事業承継コンサルティング株式会社 代表取締役
島津会計税理士法人東京事務所長
公認会計士、税理士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)

一橋大学大学院商学研究科修了(経営学および会計学専攻)。 中央青山監査法人(PwC)にて事業会社、都市銀行、投資信託等の会計監査および財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、メリルリンチ日本証券、SMBC日興証券、みずほ証券に在籍し、中小企業経営者の相続対策から大企業のM&Aまで幅広い組織再編と事業承継をアドバイスした。 現在、相続税申告を中心とする税理士業務、富裕層に対する相続コンサルティング業務、中小企業経営者に対する事業承継コンサルティング業務を行っている。 日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。中小企業庁「事業承継ガイドライン」改訂小委員会委員。

著書紹介

信託&一般社団法人を活用した相続対策ガイド【中央経済社】
金融機関・税理士・FP・PBのための事業承継・相続における生命保険活用ガイド―活用手法と税務【清文社】
税理士・会計事務所のためのM&Aアドバイザリーガイド【中央経済社】
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事業承継ガイドライン完全解説【ロギカ書房】
資産タイプ別相続生前対策完全ガイド【中央経済社】
顧問税理士が教えてくれない 資産タイプ別 相続・生前対策パーフェクトガイド【中央経済社】
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専門家のための事業承継入門〜事例で学ぶ!事業承継フレームワーク〜(共著)【ロギカ書房】
証券投資信託の開示実務【中央経済社】など他多数。