事業承継ONLINE

【事業承継税制の日本一分かりやすい解説】適用できる会社の要件(公認会計/士税理士 岸田康雄)

2019年03月25日  

1 納税猶予制度の適用要件

贈与税・相続税の納税猶予制度を含め、経営承継円滑化法の適用対象となる会社の要件は、次の通りです(会社に限定されます。個人事業主に適用することはできません。個人事業主が対象の制度は2019年度中に導入される予定です)。

①中小企業であること(対象の要件は図表を参照)
②上場会社・風俗営業会社に該当しないこと
③資産保有型会社等でないこと

資産保有型会社とは、自ら使用していない不動産(賃貸用・販売用)・有価証券・現金預金等(特定資産)が70%以上ある会社をいい、資産運用型会社とは、これらの特定資産の運用収入が75%以上の会社をいいます。ただし、一定の事業実態がある場合には、資産保有型会社等に該当しないものとみなされます。

一定の事業実態とは

①商品の販売・貸付け等を3年以上行っていること(同族関係者などへの貸付けは除きます)
②後継者と生計同一の親族以外の常時使用従業員が5人以上いること
③後継者と生計同一の親族以外の常時使用従業員が勤務している事務所、店舗、事務所を所有または賃貸していること

贈与税の納税猶予制度の適用対象となる先代経営者(贈与者)および後継者(受贈者)の要件は、次の通りです。

2 先代経営者(贈与者)の要件

①会社代表者であったこと

②贈与時までに、代表者を退任すること(有給役員で残ることは可能)

③贈与の直前において、先代経営者と同族関係者 (親族等)で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ、同族内 (後継者を除く)で筆頭株主であったこと
④株式を一括して贈与すること

3 後継者(受贈者)の要件

①会社の代表者であること
②20歳以上、かつ役員就任から3年以上経過していること
③贈与後、後継者と同族関係者 (親族等)で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ、同族内で筆頭株主となること(複数後継者の特例あり)

4 納税猶予制度の10年間の特例措置

事業承継税制の創設以来、その利用件数が増えないことを問題視されていました。この原因は、納税猶予制度の手続きが煩雑であること、納税猶予制度そのものが難解であることが挙げられていました。
また、認定後においても、雇用を5年間で平均8割を維持することが困難と感じられることや、納税猶予が取り消された場合のリスクが極めて大きい、M&Aという経営戦略が封じられることは酷だなどと誤解されたことから、いわゆる「適用の打ち切りリスク」の伴う制度として、多くの中小企業経営者から敬遠されていました。

そこで、平成25年度改正では、多くの中小企業に納税猶予制度の利用を促進するため、親族外承継への適用、事前確認制度の廃止に取締役退任から代表者退任への変更、雇用確保要件の緩和などの改正が行われました。

しかしながら、この改正でも十分な成果が出なかったことから、2017年には、雇用確保要件のさらなる緩和、相続時精算課税制度に係る贈与への適用などの改正が行われました。そして、2018年 に3度目の改正が行われることとなりました。平成30年度税制改正では、10年間の特例措置として、各種要件の緩和を含む抜本的な拡充を行うこととされました。

4-1 納税猶予の適用対象が100%へ拡大

後継者が、会社の代表者から、贈与または相続で株式を取得した場合には、「すべての株式」(←一般措置は上限3分の2)に係る課税価格に対応する贈与税および相続税の100%(←一般措置は80%)について、その後継者の死亡日までその納税を猶予されることになりました。

4-2 先代経営者以外の株主から贈与された株式も対象に

後継者が会社の先代経営者以外の株主から贈与を受けた株式についても、先代経営者の贈与から5年以内に贈与を行うものに限り、適用対象とされることになりました。つまり、複数の贈与者から贈与された株式が納税猶予の対象となります。また、後継者は1人ではなく最大3名となり、10%以上の株式の贈与を受けた3名の後継者まで適用されることとなりました。

4-3 雇用確保要件を満たさない場合は期限延長も

雇用確保要件を満たさない場合、経営が悪化したと認定支援機関が意見を付した書類を提出した場合は、期限が延長されることとなりました。

4-4 経営環境が悪化した場合の特例

経営環境が悪化した場合(要件あり)、5年経過後に株式を譲渡するとき、合併によって会社が消滅するとき、会社が解散するとき等には、株式評価の低下に応じて納税猶予税額が免除されることになりました。

4-5 親族外承継における相続時精算課税の適用

後継者が贈与者の推定相続人以外の者(要件あり)であっても、相続時精算課税の適用を受けることができることとなりました。

以上、この特例措置を要約しますと、業承継計画の策定を条件として、納税猶予対象が拡大されるとともに、適用の打ち切りリスクが緩和されるということです。

特例措置は、事業承継税制(一般措置)の特例であり、2018年1月1日から2027年12月31日までの10年間で、2018年4月1日から2023年3月31日までの5 年以内に特例承継計画書の認定を受けた特例認定承継会社について適用されます。

ここで、一般措置が併存していることに注意が必要です。それゆえ、すでに一般措置を適用した会社は特例措置を適用することはできません。また、10年後には特例措置が廃止されて、一般措置に一本化される可能性があります

執筆者紹介

岸田 康雄 (きしだ やすお)

事業承継コンサルティング株式会社 代表取締役
島津会計税理士法人東京事務所長
公認会計士、税理士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)

一橋大学大学院商学研究科修了(経営学および会計学専攻)。 中央青山監査法人(PwC)にて事業会社、都市銀行、投資信託等の会計監査および財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、メリルリンチ日本証券、SMBC日興証券、みずほ証券に在籍し、中小企業経営者の相続対策から大企業のM&Aまで幅広い組織再編と事業承継をアドバイスした。 現在、相続税申告を中心とする税理士業務、富裕層に対する相続コンサルティング業務、中小企業経営者に対する事業承継コンサルティング業務を行っている。 日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。中小企業庁「事業承継ガイドライン」改訂小委員会委員。

著書紹介

信託&一般社団法人を活用した相続対策ガイド【中央経済社】
金融機関・税理士・FP・PBのための事業承継・相続における生命保険活用ガイド―活用手法と税務【清文社】
税理士・会計事務所のためのM&Aアドバイザリーガイド【中央経済社】
富裕層マーケットで勝つための新たな営業手法 プライベートバンキングの基本技術【清文社】
相続生前対策完全ガイド【中央経済社】
中小企業のための会社売却(M&A)の手続・評価・税務と申告実務【清文社】
事業承継ガイドライン完全解説【ロギカ書房】
資産タイプ別相続生前対策完全ガイド【中央経済社】
顧問税理士が教えてくれない 資産タイプ別 相続・生前対策パーフェクトガイド【中央経済社】
事例で学ぶ!事業承継支援完全マニュアル〜経営・手続き・後継者の3つの側面〜【ロギカ書房】
専門家のための事業承継入門〜事例で学ぶ!事業承継フレームワーク〜(共著)【ロギカ書房】
証券投資信託の開示実務【中央経済社】など他多数。