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【企業経営者の相続対策】企業経営者の自社株対策の基本!類似業種比準価額を引き下げよう!(公認会計/士税理士 岸田康雄)

2019年04月11日  

1 類似業種比準価額を引下げる方法

類似業種比準価額を引下げるためには、退職金を支払うことで、利益(課税所得金額)を減らすことが基本です。1期のみ赤字の事業年度を作って、株式評価が最も下がる時にまとめて一気に生前贈与を実行することになります。

たとえば、株式評価を下げた事業年度の翌年に、相続時精算課税制度によって贈与すれば、後継者への株式承継を一気に完了させることが可能となります。

実務の現場では、たとえば、前年度3億円の利益を計上していた会社が、生前贈与を実行する事業年度に利益を1億円に減少させることによって、株価を@20,000円から@10,000円まで引下げて生前贈与することができたというような事例がたくさんあります。

利益を圧縮する(可能であれば赤字にする)ための基本は、役員退職金の支払いによる損失計上です。企業オーナーの退職と同時に後継者へ株式を贈与するのであれば、その直前期における役員退職金の支払いを実行します。役員退職金の支払いがあると、多額の損金が計上されて利益が減少するとともに、利益剰余金の分配によって純資産も減少しますから、株式の評価が下がります。

法人税法では、次のような計算式によって求められた金額を役員退職金として損金算入を認めています。

役員退職金 = 最終報酬月額 × 勤務年数 × 功績倍率

オーナーがすべての役職から退く際に役員退職金を支給する場合は全く問題ありませんが、常勤から非常勤になる際に支給するのであれば、その実態を伴っていることが必要です。たとえば、退職後も引き続き会社に出社して経営指揮をとって意思決定をしていたら、法人税法上、退職金の損金算入は認められません。また、受け取った企業オーナー側でも、所得税法上、退職所得として税負担を軽くすることはできません。

しかしながら、企業オーナー個人に退職金を支払うことによって、相続財産としての現金が増えてしまうことになります。退職金支払いの後には、現金という個人財産の相続税対策が必要となることに留意する必要があります。

また、従業員に賞与を支給する、古い固定資産を除却する、費用を前払いするといった伝統的な決算対策の方法を使うことができます。これらの考え方は法人税に対する節税手法と同じです。また、役員に昇格した人や子会社に転籍した従業員に退職金を支給することによっても、同様の効果を得ることができます。

特に、含み損を抱える土地や有価証券を思い切って売却し、損失を実現させることは、財務の健全化の観点からも効果的な方法です。含み損を実現させることによって、株式の相続税評価を下げることができるだけでなく、貸借対照表の簿価を適正価額に修正することができます。

2 全損保険の代わりに活用したいオペレーティング・リース

オペレーティング・リース契約によって多額の損金を計上する決算対策もあります。法人が航空機を購入し、その減価償却費を損金に計上するのです。これは、航空機、海上コンテナ、船舶等の大型リース資産へ匿名組合出資する契約で、決算対策の手段として活用される節税(利益繰延べ)スキームです。

この契約の仕組みは、リース収入は毎年定額である一方、リース資産に伴う減価償却費が定率法によって計算され、かつ、リース期間よりも短い耐用年数にわたって費用配分されることから、リース期間の前半には必ず投資損益が赤字となり、投資家に対して損失が分配される契約となっていることです。それゆえ、初年度において数千万円、数億円単位の大きな損失を取り込むことが可能となります。ただし、匿名組合への出資の際に多額の現金支出を伴いますので、会社の資金繰りには注意しなければなりません。

日本生命が販売していたプラチナ・フェニックスなど、保険料を全額損金とすることが可能な生命保険契約が使えなくなりましたので、今後の決算対策には、オペレーティング・リース契約を活用するケースが増えることでしょう。