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【企業経営者の相続対策】企業経営者の自社株対策はまだあるぞ!組織再編で株価を引き下げよう!(公認会計/士税理士 岸田康雄)

2019年04月11日  

1 特定会社の適用を外して類似業種比準価額方式を使う

非上場株式の評価において特定会社に該当すれば、純資産価額方式が適用されることになるため、特定会社から一般の評価会社へ変更することが効果的な相続税対策となります。特定会社には株式保有特定会社と土地保有特定会社がありますが、これらに該当することを外すためには、土地や株式以外の資産を追加取得することによって土地や株式の保有比率を下げる必要があります。

最も簡単にイメージできる方法は、グループ会社同士の合併でしょう。また、株式保有特定会社の適用を外すことを目的として、不動産(土地または建物)の取得によって株式の保有割合を下げる方法が考えられます。

一方で、土地保有特定会社の適用を外すには、土地の有効活用も兼ねて、建物を新築することが効果的です。M&Aによって他社の事業を買収し、不動産会社から事業会社へ転換してしまうことも、土地保有特定会社の適用を外す選択肢の1つとなるでしょう。

2 純資産価額を引下げる方法

純資産価額を引き下げるために効果的な方法は、不動産を取得することです。
たとえば、銀行借入れにより調達した資金を使って賃貸マンション、賃貸オフィスなどの収益物件を取得します。

もちろん、相続税対策のみを目的とした結果、会社の事業価値を毀損してしまうようでは本末転倒ですから、賃料収入からの投資収益率が高く、いつでも売却できるような物件を取得しなければなりません。
賃貸不動産を取得した場合、取得してから3年後に取得価額から相続税評価に引下げられ、加えて、土地は貸家建付地による評価減、建物は貸家による評価減が行われます。すなわち、賃貸不動産の評価は、その投資額を大きく下回る相続税評価となります。

また、企業経営者に対する退職金の支払いは、類似業種比準価額の引下げ対策としても効果がありますが、純資産価額を引下げることにもなります。ただし、株式評価において、課税時期から3年以内に取得した不動産は取得価額で評価しなければなりません。それゆえ、不動産投資によって純資産価額の引下げを行う場合には、贈与を行う時期よりも3年以上前に賃貸不動産を取得することが必要になります。

3 業績の悪い子会社の株式や債権を処分しよう

経営不振によって債務超過に陥っている子会社がある場合には、思い切って子会社を清算しましょう。清算する際には、子会社株式や子会社貸付金といった資産が償却され、多額の損金を計上することとなります。これによって類似業種比準価額の計算要素である「1株当たり利益金額」 と「1株当たり純資産額」を減額することができるのです。

4 合併によって株価を引下げる

組織再編を利用した相続税対策の代表的な方法が、グループ会社同士の合併です。すなわち、合併によって株式評価の引下げを行うということです。たとえば、図表3-35のようなケースです。

損益がマイナス(赤字)の子会社や兄弟会社が存在する場合には、赤字会社を吸収合併することにより、評価会社の利益を圧縮し、類似業種比準価額を引き下げることが可能になります。その際、合併によって含み損のある資産を引き継ぎ、合併後に当該資産を売却することにより売却損を計上させる方法が効果的でしょう。

ただし、合併の前後で会社実態が変化する場合、合併のあった事業年度とその翌事業年度においては、株式の相続税評価に類似業種比準価額を採用できず純資産価額方式の適用が強制されるという見解があるため、注意しなければなりません。

純資産価額で株式を評価する場合、債務超過の子会社に対する株式評価はゼロ円となり、マイナスの純資産を単体の株式評価に反映させることはできません。しかし、当該債務超過の子会社を吸収合併すれば、マイナスとプラスの純資産と相殺することができるようになり、マイナスの純資産を活用して評価会社の純資産価額を引き下げることが可能となります。

5 会社分割によって株価を引下げる

会社分割による相続税対策の効果を検証してみましよう。計算を単純化するために分割型分割を想定し、純資産価額によって評価を行う数値例を使います。たとえば、ある企業オーナーが、自社株式の評価を引き下げたうえで後継者である子供に株式を移転したいと考えています。会社は多額の不動産を保有しており、本業に関わる事業用不動産については含み益がある一方で、バブル期に投資した賃貸不動産には大きな含み損があります。このような場合、どのような相続税対策が考えられるでしょうか。

一般的に、業歴が古い会社は、本業に必要な事業用の土地や建物は長期間保有していることが多く、含み益のあるケースが多くみられます。その一方で、バブル期に投資した賃貸不動産には大きな含み損が生じているケースも多くみられます。このような場合、以下の数値例のように含み損が大きい資産を分離することで、貸借対照表が健全化されるとともに、自社株式の評価を引き下げることが可能になります。]

【数値例】
自社が所有する不動産には、A不動産(相続税評価38百万円=簿価20百万円 + 含み益18百万円)と、B不動産(相続税評価10百万円 = 簿価25百万円 − 含み損15百万円)があります。

自社株式の評価方法が純資産価額であった場合、その評価額は次のように計算されます(単位:百万円)。

純資産(帳簿価額)=20+25+40-65=20
純資産(相続税評価額)=38+10+40-65=23
株式の相続税評価=23-(23-20)×37%≒22(分割前)

純資産価額方式による評価では、相続税評価による純資産価額と帳簿価額による純資産価額の差額の37%(法人税等相当額)を相続税評価による純資産価額から控除することとされています。

この点、含み益のある資産と含み損のある資産の両方がある場合は、これらが相殺されるため、控除できる法人税等相当額が小さくなってしまいます

そこで、含み益に対する法人税等相当額の控除を最大限利用できるように、含み損のある資産を分離するのです。

すなわち、B不動産(相続税評価10百万円、簿価25百万円)を図表3-39のような会社分割によって分させると、株式の評価が下がります。

ここでは、A不動産の含み益18百万円とB不動産の含み損15百万円が相殺されているため、法人税等相当額が1百万円 (≒ (23-20)× 37%)しか控除できない状態となっています。そこで、分社型分割によってB不動産を新設のB社に移します。そうすると、A不動産の含み益18百万円に対する法人税等相当額7百万円(≒18×37%)を控除することができるようになるため、企業経営者にとっての株式評価はA社とB社のトータルで16百万円となり、分割前の22百万円から6百万円引き下げることが可能になりました。これは法人税等相当額の控除を大きく活用することによって得られた効果です。

この数値例の場合、結果的に約6百万円の評価引下げを実現することができました。このように、資産の含み益を含み損と相殺させずに、法人税等相当額を大きく活用することによって、株式評価を引き下げることが可能となります。