事業承継支援研究会

第4回 事例研究問題

2018年01月09日  

1月11日第4回事業承継支援研究会にて用いる予定の問題を事前掲載いたします。
下記の画像をリンクしていただくことでPDFが開きますので、ご利用ください。

第4回事業承継支援研究会 事例研究問題

事例研究7(少数株主)

事例

A社(食品小売業、従業員数20人、売上高15億円、当期純利益5千万円、純資産5億円)は、関東の地方都市にある創業50年の食品製造・卸売業であり、2代目の乙氏(甲社長の夫)が他界して以来、妻である甲社長(65歳、代表取締役)が代表を努めています。甲社長は、引退して、社長の座を息子の丙部長(40歳)に譲りたいと考えました。甲社長が経理など管理全般を担当しているのに対して、営業は丙部長が担当しています。
業績は好調であり、今期の売上高と利益は前期を上回る見通しです。

丙部長の母親である甲社長は中継ぎとしての社長でしたので、現在は実質的に丙部長が経営を行っている状態です。重い借入金を抱えるA社の財務内容を改善するためには、収益力向上が必要だと考えている丙部長は、今期に入って、「そろそろ自分が代表に就かなければいけない。」と考えるようになりました。
母親である甲社長に社長交代を打診したところ、それを了承してくれましたので、今週、いつもお願いしている司法書士に代表者の登記変更の手続きを依頼しました。
しかし、丙部長には気になっていることがあります。その一つが株主名簿です。

A社 株主名簿

丙部長の父親である甲は生前50株を所有していましたが、母親である乙社長と兄弟3人で相続しました。
丙部長の兄は、製造部門(惣菜加工)の部長です。調理の腕がよく、従業員から信頼と支持を得ています。
丙部長の弟は、日雇いアルバイトをしていますが、お金に困っており、サラ金から頻繁に取り立てがあると聞いています。
甲社長の弟(丙部長の叔父)である丁専務は、卸売部門を担当しています。その息子(丙部長のいとこ)は、卸売部門の物流管理を統括しています。
なお、10株所有している岸田税理士は、創業時から甲社長が付き合ってきた顧問税理士で、現在84歳です。
ちなみに、株主名簿の一番下の佐藤という名前は、丙部長に心当たりはありませんでした。母親に聞いたところ、「佐藤さんは、お父さんの親友でしたが、もう何年も前にお亡くなりになっているはずです。」とのこと。

丙部長は、不明株主がいたり、経営に関与しない株主が多数いたりする状況は問題ではないかと感じましたが、とりあえず自分が代表に就任することが先決であり、株主の問題は後回しにしようと思いました。
昨日、司法書士から依頼していた登記申請書類一式が送られてきており、その中には株主総会議事録が入っていまいた。これに署名捺印して返送すれば、代表者変更の登記が完了するとのことでした。株主総会議事録(取締役選任)と取締役会議事録(代表取締役選任)には押印が必要とのこと、その手続が煩わしいので司法書士に相談したところ、「社長以外は認印でいいよ」とのことでした。
丙部長の代表取締役就任について、メインバンクである東武信用金庫には、すでに甲社長から伝えてあります。信金の支店長も、「事業承継が行われることはよいことですね。これで御社の永続的な成長を実現できるでしょう。こちらの手続きとしては、新代表である丙さんに個人保証の必要書類を提出していただくことくらいです。」と言って、歓迎してくれたとのことです。
丙部長は、「私がやるしかない!」と言いつつ漠然とした不安を抱えており、中小企業診断士であるあなたに相談しました。

問題

【問1】 現在の株主に関する問題点を説明してください。

【問2】 丙部長は代表取締役に就任すべきかどうか、丙部長にアドバイスしてください。

ヒント

「支配権」  株式承継(法人)又は不動産承継(個人)、分割と税負担
「借入金」  個人保証の引継ぎ、解除
「リーダー」 社長と従業員との信頼関係、経営理念、リーダーシップ
「管理」   従業員・組織の管理、規則、コンプライアンス
「戦略」   企業の収益性と成長性の維持、新規事業
「知的資産」 顧客関係、営業力、技術・ノウハウ、許認可

事例研究8(後継者の決意と覚悟)

事例

B社(機械製造業、従業員数20人、売上高10億円、当期純利益3千万円、純資産2億円、借入金1億円)は、関東の地方都市にある創業50年の町工場であり、創業者である甲社長(代表取締役、75歳)がここまで大きくしてきました。大手自動車メーカーとの継続的な取引があり、業績は安定しています。しかし、甲社長は、持病の進行と体力の衰えから、そろそろ引退したいと思っています。
しかしながら、子供は娘2人で、いずれも結婚して専業主婦をしています。親族は誰もB社で働いていません。親族内承継は難しい状況です。
そこで、中堅社員として頑張っている乙部長(45歳、営業担当)を後継者にするのはどうかと考えました。乙部長は新卒でB社に入社し、工場の製造作業と総務経理の仕事を経験し、10年前から営業部長として活躍しています。
甲社長は乙部長に会社を継いでくれないかと相談したところ、乙部長から「しばらく考えさせて欲しい。」と言われました。

問題

【問1】 乙部長が後継者となる場合、従業員から経営者に転身しなければいけません。個人のキャリア形成の観点から、経営者になるメリットとデメリットは何でしょうか?

【問2】 乙部長が後継者となることを検討する場合、乙部長自身が具体的に検討すべき事項を列挙してください。

ヒント

「支配権」  株式承継(法人)又は不動産承継(個人)、分割と税負担
「借入金」  個人保証の引継ぎ、解除
「リーダー」 社長と従業員との信頼関係、経営理念、リーダーシップ
「管理」   従業員・組織の管理、規則、コンプライアンス
「戦略」   企業の収益性と成長性の維持、新規事業
「知的資産」 顧客関係、営業力、技術・ノウハウ、許認可