第27回 事例研究問題 (12月2日事業承継支援研究会)
12月2日(月)第27回事業承継支援研究会の事例研究問題を掲載いたします。
下記の画像をクリックしていただくことでPDFが開きますので、事前にご確認ください。
27回事業承継支援研究会 事例研究問題
事例研究1(事業承継税制)
甲氏(60歳)は、30年前に設立したA社(機械部品製造業、従業員数30人、売上高30億円、当期純利益5千万円、純資産5億円、純有利子負債2億円)の創業者であり、株式1,000株(発行済議決権株式の100%)を所有し、これまで代表取締役社長として頑張ってきました。
引退を考えるようになった甲氏は、一人息子である長男である乙氏(30歳)に承継したいと考えています。乙氏には兄弟はいません。
乙氏は、外国語大学中国語学部を卒業後、大手商社に就職しましたが、サラリーマンとしての生活には満足しておらず、将来は父親の会社を継ごうかと考え始めました。ただし、乙氏は経理部で8年間勤務したものの、営業職の経験がありません。その一方で、外国語を得意としており、中国企業との人脈も豊富で、流暢に北京語を話すことができます。
A社は、これまで国内大手機械メーカーから安定的に部品製造業務を受注し続け、黒字を続けてきました。このような得意先との関係性は、甲氏の属人的な営業力によるものでした。甲氏が得意先の購買担当者と、毎月ゴルフと会食接待を続けていたことが、取引関係を維持できた理由かもしれません。
しかし、今年に入って、大口得意先の1社から、取引を打ち切られてしまいました。その得意先は、A社よりも低コストで部品を製造することができる中国企業から輸入に切り替えるとのことです。A社にとっては大きな売上減少です。このような事態に直面した甲氏は、これまでよりも工場の生産性を高め、製造コストを削減しなければいけないと考えました。しかし、甲氏には、もはや全社的な改革に取り組む気力はなく、この問題は後継者である乙氏に任せたいと考えています。
一方、事業承継を準備するため、顧問税理士に株式を評価してもらったところ、株式評価額は100%で10億円でした。甲氏は、これ以外にも個人財産を約5億円所有しているため、相続税は約7億円と見積もられています。
【問】 甲氏は、事業承継をどのように進めたらよいでしょうか?
事例研究2(過大な債務と事業価値の承継)
丙氏(60歳)は、高級寿司店5店舗を営むB社(飲食業、従業員数20人、売上高10億円、当期純利益▲1千万円、純資産▲5億円、純有利子負債10億円)の創業者です。30年前に設立して、株式100%を所有し、これまで代表取締役社長として頑張ってきました。B社のお寿司は「新鮮でとても美味しい、板前さんの愛想もよく、サービスが良い」と好評です。
引退を考えるようになった甲氏は、後継者を誰にすべきか悩んでいます。しかし、医師として活躍する長男、孫の育児に専念する長女には、会社を継ぐことは難しそうです。そこで、入社20年目、板前として頑張ってくれている丁氏(40歳)に承継したいと考えました。先日、2人で話す機会があり、「B社を継いでくれないか。」と丁氏に承継を打診しました。
丁氏は、根っからの職人気質を持っており、美味しいお寿司を握ることが生きがいとなっていたため、自分が会社の社長になることについて大きな不安を持ちました。なぜなら、B社は10年前に無理な新規出店と不動産投資による巨額な損失を計上した結果、10億円もの借入金を抱えているからです。支払利息の支払いが毎年2千万円あり、ここ数年は赤字が続いてきました。
丁氏が引継ぎに難色を示したため、後継者が決まらない状況が続くなか、ある日、丙氏のもとに、「新しく完成したJR駅ビルに出店しないか」という話しが持ち込まれました。この駅の利用客数はとても多く、開店すれば繁盛することが間違いありません。年間売上高3億円超は期待できる優良な投資案件です。丁氏は、駅ビルにぜひ出店したいと思いました。
このような投資案件もあり、丙氏は、事業承継支援の専門家であるあなたに相談してきました。丙氏は、「JR駅ビルに新店舗を出せば、大きく稼ぐことができる。これで借入金を返済できだろう。しかし、過去の失敗は、私の責任。丁氏に返済させるのはかわいそうだ。儲かる商売だけを引き継ぎたいものだが・・・。」と辛い表情を見せています。
【問】あなたは、どのような指導を行いますか?