M&Aを税理士に相談するのはどのような場合か?
税理士は日頃から企業の帳簿を確認しているため、企業価値を正しく評価できます。企業の評価はM&Aを考えている経営者には最も知りたい情報です。そこで今回は税理士に相談しようかと悩んでいる経営者のために、税理士に相談したときの費用と相談内容のポイントについて解説します。
M&Aを税理士に相談すべきか?
昔なら経営コンサルタントや金融機関を通じでM&Aの相談するのが普通でした。しかし、最近のM&Aは知識を豊富に持っている税理士が増加し、会計や税務以外に専門的に行なっている事務所もあります。
もともと税理士はその業務の特性上、会社の経営状態を把握するのは簡単です。M&Aには税金に関する問題も多くあります。この問題をクリアにできるのは税理士です。それだけでも税理士にM&Aについて相談することはメリットがあります。
M&Aと聞いて税理士とともに連想するのは、経営コンサルタントです。税理士の資格を持って経営コンサルタント業務をする場合は別です。しかし、経営コンサルタントとして経営コンサルティング業務のみをしている場合は、M&Aにまつわる複雑な税務に対応できません。税務申告やその後の税務署との対応を考えると経営コンサルタント業務をする税理士に依頼するのがベストです。
M&Aに係る税理士の役割と業務内容
具体的に税理士がM&Aでできる業務内容は、スケジュール(計画)、M&Aの相手を見つけること(提携金融機関との情報交換)、実際のM&A先との交渉があります。
実際に経営者は以下のような悩みを抱えて税理士に相談に来ます。
・新規事業を考えているが、設備や場所、人材の確保が難しいのでどこかそういう企業はないか
・メインバンクからM&A先を紹介されたが企業価値が分からない。
・経営がうまくいっていないので、どこか従業員ごと面倒を見てくれるところはないか
・M&Aの相手先には専門家がいて相手が有利に交渉を進めているように感じる
など、様々な悩みを抱えて相談にきます。経営者は従業員の生活を守らなければなりません。もしM&Aに失敗すれば、大きな損失になることも否定できません。これらの悩みの解決方法を依頼者と一緒に探すのが税理士です。
M&Aに係る税理士の報酬はいくらか?
実際にM&Aをしたときに決算申告業務が必要になります。もしM&Aで吸収される側であれば通常の決算とは関係なく、会社が吸収されるときに決算業務に取り掛からなければなりません。
金融機関に依頼すれば、一般的にレーマン方式でM&Aアドバイザリー報酬は決まります。高額な報酬がかかるといわれており、成功報酬も支払わなければなりません。レーマン方式は所得税の累進課税方式のように、取引金額に対して一定の率をかけて報酬を決定します。銀行によって報酬金額の中身が変わるのでA銀行では1,000万円といわれても、B銀行では1,500万円といわれる可能性があります。
その点、税理士であれば、デューデリジェンス費用で50万円、その他手続きに50万円など明確に費用を提示してもらえます。C税理士事務所で150万円と費用の見積もりが出た場合、D税理士事務所では250万円という大きな乖離は考えにくく、実際に遂行する業務で報酬金額が決まっているのが特徴です。
税理士にM&Aを相談するときの注意点
最近の税理士は、通常の税務申告のほか生き残りをかけて経営助言業務をする事務所が多くあります。つまり、顧問先の経営状態の把握は当たり前です。
例えば、顧問契約の中に通常の月次監査のほか「経営助言」や「経営コンサルティング」をうたっている税理士であれば、まず最低限の条件はクリアです。
ただし、うたっているだけでは実際に実務ができるかどうかは別です。なぜなら、できなくても「できる!」と自己アピールする税理士も現実には数多く存在しているためです。
もし差し支えなければ、3期分くらいの決算書を持参し税理士に開示したうえでその会社をどのように判断するのか聞いてみてもよいでしょう。数字の裏にある経営状態を知ろうとする税理士や、すでに予測して読み取れる税理士であれば大切な会社の将来を任せられます。
M&Aは一日で完結するわけではありません。それなりに長い期間が必要です。その間、信頼できない税理士、経営者の意見をくみ取ってもらえない税理士では経営者にとってストレス以外に何もありません。
M&Aの相談に強い税理士は誰なのか?
M&Aに関する税務サポートができるのはもちろんのこと、それ以外についての知識も必要です。例えば、デューデリジェンスに関する知識、バリュエーションに関する知識、最も依頼者にとって最適な方法をアドバイスするためのアドバイザーとしての手腕です。
税務のサポートは税理士としては当たり前ですが、実際にはM&Aを実施したときの税務申告は複雑です。税務署から指摘を受けないためにも慎重な判断と、豊富な経験と知識が必要です。
また、税理士だけの知識ではカバーできないこともあります。例えば会社法に関する知識について、何か問題が出てきた場合、こちらは訴訟に発展する可能性があります。そうならないためにも、税理士が提携の弁護士を知っていれば安心です。もちろんM&Aを考えている会社に顧問弁護士がいれば別ですが、日本の中小企業の場合顧問弁護士がいるというケースは非常にまれです。
したがって、何らかの問題があった場合のことも考えて専門家同士のつながりがある税理士を選ぶことが大切です。
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