事業承継支援研究会

第23回 事例研究問題 (8月5日事業承継支援研究会)

2019年07月18日  

8月5日(月)第23回事業承継支援研究会の事例研究問題を掲載いたします。
下記の画像をクリックしていただくことでPDFが開きますので、事前にご確認ください。

第23回事業承継支援研究会 事例研究問題

事例研究23-①(人的資源の承継)

事例

金属製造業のA社は、高度な特殊技術を持つため、これまでリーマン・ショックなど数回の経営危機を乗り越え、近年の売上や利益は堅調です。
しかし、72歳になるA社社長の甲氏には子供がおらず、身体の限界も感じてきた甲氏は、会社の第三者承継(M&A)を考えるようになりました。
そこで、取引先からの紹介で同業者のB社と交渉したところ、M&Aの話がすんなりとまとまりました。B社にとってはA社の技術及び人材は大変魅力的であり、売上も好調であることから、譲渡価額は2億円が提示されました。

甲氏にもこの譲渡価額に対する異存はありません。早く譲渡を完了させて、リタイア後は夫婦で海外旅行に行こうと考えていました。
ところが、1か月後、B社の乙社長から連絡があり、人事・労務デュー・ディリジェンスの結果、「未払残業代が検出されたため、譲渡価額を5,000万円減額してほしい。」との通告を受けました。

A社の従業員は甲氏に対して忠実であり、これまで社内一丸となって働くことによって数々の経営危機を乗り越えてきました。
近年は業績が好調になったのですが、甲社長が従業員の働き方を当然と考えていたため、従業員にサービス残業を行わせていたのでした。
労働法では、未払賃金の消滅時効は2年間であり、裁判所から付加金の支払いを命じられることもあることから、従業員全体(20数名)の未払賃金の額は5,000万円近くになるとの見積りが出ているのです。

ヒト、モノ、カネの中でも「ヒト」の承継は最も難しく、これを滞りなく承継していくことはたいへん重要なテーマであります。
しかしながら、人事労務の問題を軽視している経営者がいまだに多いのが現状です。
人事労務の重要性を理解したうえで、人的資源の承継を円滑に進めるにはどうすればよいか考えてみましょう。

設問1

本問では、M&Aにおいて買い手候補が対象会社に対して、「人事・労務デュー・ディリジェンス」を実施しています。
M&Aにおいて、人事・労務に関するデュー・ディリジェンスが必要なのはなぜか、説明してください。

設問2

M&Aのみならず親族内承継においても人事・労務に係る事業性評価が重要であると言われます。
それはなぜでしょうか。また、事業承継を行う後継者は、どのようにして人事・労務に関する調査を行えばよいでしょうか。

事例研究23-②(後継者による事業戦略の立案)

事例

Y社は、N社長(63歳)が30歳で創業し、年商は2億円、社員8人、現在33期目の建築設計事務所(意匠設計)です。

<事業性>
Y社は創業以来の方針で、大手建設会社の下請け的な仕事ではなく、施主と直接契約を結ぶことを原則としています。
また、設計業務だけでなく建設工事の完了までの監理業務を合わせて行うノウハウを有しています。高級集合住宅や介護系建築に強く、自社の意匠性を存分に活かした仕事により、小粒ながらも業界でも一定の地位を築いています。

売上は設計人員によって左右されますが、基本的には安定的な受注があり、場合によってはマンパワー不足で仕事を断らざるを得ないこともあります。
営業利益、経常利益は、ともに黒字です。運転資金などに充てる通常範囲の金融機関からの借入がありますが、問題なく返済しており、キャッシュ・フローは黒字です。業種柄、大規模な設備は不要で、財務的なリスクはほとんどありません。

<後継者>
Y社での社歴が15年になるK氏(43歳、取締役設計部長)が後継者になることが確定しており、再来期の社長交代に向けて、経営の勉強中です。

<支配権>
Y社株式をK社長が100%保有しており、K氏にすべてを譲渡することで話はまとまっています。

今期の決算も無事終わり、来期の事業計画を立案するにあたり、N社長はK氏に「2年後の社長就任を踏まえ、事業計画の土台となる事業戦略を考えてごらんなさい」と伝えました。

K氏は、あるセミナーで事業戦略についての勉強をしたことはありますが、実際に自社の戦略を策定するのはこれが初めてです。
そこでK氏は、社長の了解を得たうえで、先日参加した事業承継支援研究会の後継者向けセミナーの事務局に連絡し、後継者としての事業戦略策定を支援してくれる中小企業診断士を紹介してくれるよう依頼しました。

それをうけ、あなたが支援者として担当することとなりました。
Y社の状況について詳細な資料は、すでにあなたの手元にあります。

設問①

事業戦略策定のための会議を、あなたとK氏の二人で行うこととなりました(Y社長了承済み)。K氏には、自分なりに考えた事業戦略書を当日までにあなたに送るようお願いしてあります。
あなただったら、どのような内容の会議にするかを考えてください。なお、会議の時間は3時間以内を予定しています。